2012-08-07

立秋、ムクゲ、無窮花、木槿、Rose of Sharon…

今日は、二十四節気(一年を二十四等分した東アジアの太陽暦)の立秋です。
朝から真夏の太陽が照りつけ、今日も軒下の温度計は29度(正午現在)を示しています。ただ、雨模様の昨日に比べると空気が乾いていて、室内でじっとしている分には汗もかかず、冷房も必要がありません。 みなさまの地方はいかがですか。


それがしも その日暮らしぞ 花木槿(はなむくげ)
                              …小林一茶

ムクゲの花が咲き始めました。夏の終わりから秋のはじめにかけて咲き、俳句では秋の季語となっていますね。

その日暮らし…」は、典型的な一日花で、朝開いた花は夕方にはしぼんでしまう様子を捉えています。江戸で俳諧を学んだ後信州に帰郷した一茶は、実生活上ではなかなか安定した暮らしが送れなかったようです。自身の身の上を重ねあわせて詠んだのでしょう。

一方、この花を国花とする韓国では、たとえひとつひとつの花の命は短くとも、次から次と咲き続けて尽きることがないところから「無窮花(ムグンファ)」と呼び、古来、他民族からの支配や侵略を受けながらも、独自の文化と民族性を世代を超えて受け継いでいった自らの姿に重ね合わせているそうです。

俳句や和歌では木槿と表記しますが、これは中国語の木槿(mùjǐn ムーシン?)」からの借用です。漢方では白花系のムクゲの蕾を乾燥させたものを「木槿花」と呼び、胃腸炎に処方するそうです。また、枝は製紙材料に用いられたそうです。古来東アジア世界では、中国を起点に、実用的な植物として広まっていたようです。

小学館版園芸植物大事典では、中国が原産とされていますが、朝日百科 植物の世界(1995)では、東アジアから中近東まで広く分布していて、原産地は不明とあります。ムクゲはハイビスカスの仲間(和名はフヨウ属、学名はHibiscas属)となり、この仲間では最も耐寒性のある丈夫な花木です。

ムクゲの学名は、Hibiscas syriacus (ヒビスカス・シリアクス)と記述され、意味は「シリア原産のハイビスカス(=エジプトの神イビスに似たもの)」。シリアはいま、内戦状態にある中近東のシリアです。

英語では、Rose of Sharonと呼びます。これは…


わたしはシャロンのばら、野のゆり。
(中略)
ぶどうのお菓子でわたしを養い
りんごで力づけてください。
わたしは恋に病んでいますから。

あの人が左の腕をわたしの頭の下に伸べ
右の腕でわたしを抱いてくださればよいのに。

(旧約聖書 雅歌2-1~6)

と、相聞歌形式で歌われる古代ユダヤの歌謡の中で謡われた「シャロンのばら」に由来するとされています。


世界中のあちこちで、人は花に想いを寄せて来たようですね。